第16章

「葉月はまだ小さいんです。放っておけるわけがありません」

川島羽美は言葉を選びながらも、話の端々で「葉月の症状が重くなっている」ことを強調し、千堂誠也に自閉症研究センターへ送れと言外に迫っていた。

千堂誠也は内心うんざりし、話題を切り上げるしかない。

「お前は休め。俺のほうで考える」

目的を果たせず、川島羽美は悔しさを滲ませる。

ただ、ここで追い詰めすぎれば――千堂誠也に勘づかれる。

「……分かったわ。ちゃんと、よく考えてね」

千堂誠也は小さく頷き、ソファに腰を落として目を閉じた。

……。

翌日。

榎本日織が目を覚ますなり、東雲相馬から電話が入った。続けて資料データが送ら...

ログインして続きを読む