第161章

「な、なに……虫? どこ!?」

千堂誠也の一言で、榎本日織はぱちりと目を開けた。次の瞬間、顔から血の気が引き、完全にパニックになる。

「どこ!? もう逃げた!? ねえ、早く追い払って!」

そう叫ぶなり、日織はぶんぶんと腕を振り回し――勢いよく誠也に飛びついた。必死にしがみつき、胸元に縮こまってガタガタ震える。

榎本日織は虫が大の苦手だ。

地面を歩く蟻一匹ですら、危機を感じるほどに。

誠也の胸の奥に、ほんの一瞬だけ罪悪感がよぎる。けれど、それはすぐに霧散した。

彼は日織の腰に手を回し、嘘をついている気配など微塵もなく、むしろ妙に真面目な顔で言う。

「大丈夫。もういない。怖がるな...

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