第163章

「早くこっち来て!」

「この水、ほんと冷たくて気持ちいい! 飲めそう!」

榎本日織は、口元に当てていた両手の水が少しぬるくなってきたところでようやく顔を上げ、振り返って千堂誠也を手招きした。

千堂誠也は小さく首を振る。きらきらした彼女の目を見れば、何を言いたいのかなんて一瞬で分かった。

やれやれ、とでも言いたげに息をつき、口を開く。

「ここ、かなり澄んでる。飲んでも平気だ」

その一言をもらった瞬間、日織はまた両手で水をすくい、待ちきれない様子でごくごくと喉へ流し込んだ。

ひんやりしていて、ほんのり甘い。

想像していたよりずっと美味しい。

山の風が頬を撫で、花の香りがふわりと...

ログインして続きを読む