第166章

夜が更ける。

榎本日織はベッドに横たわったまま、寝返りを打っては止まり、気づけば唇の端がふっと持ち上がっていた。

目を閉じて眠ろうとしても、頭の中に浮かぶのは千堂誠也の姿ばかりで、どうしても追い払えない。

結局、日織は深く息を吐き、ベッドを降りた。窓辺に立ち、夜空の月を見上げる。

花火はもう終わったはずなのに、千堂誠也の顔だけは、むしろさっきより鮮明だった。

そして、あの会話が――何度も、何度も、頭の中で繰り返される。

「もし俺に婚約がなかったら……俺と、試してみてくれるか」

千堂誠也は、結局また同じ問いを口にした。

けれど今回は、日織は逃げなかった。星屑みたいにきらめく彼の...

ログインして続きを読む