第30章

「榎本さん、研究はもう始まってます。方向性の最終確認、お願いします」

「榎本さん、こちら、以前の工場から届いた資料です。設備の増産について、こちらの許諾をいただきたいそうで……」

「榎本さん……」

黒崎グループと提携して薬材の供給ルートを確保してからというもの、榎本日織は研究に没頭していた。毎日、研究所に残って遅くまで働く。

家に戻る頃には、優斗と涼太はもう寝息を立てていることが多い。台所には、温め直せるようにと食事が用意されていた。

――今の生活が、好きだ。

満たされていて、充実している。そう素直に思える日々だった。

涼太と優斗も、母の忙しさを理解しているのだろう。このところ...

ログインして続きを読む