第31章

「あなたも知ってるでしょ。誠也が葉月のこと、どれだけ大事にしてるか。あの子がああ言った瞬間、すぐ『その話はするな』って……」

あの日の光景を思い出すだけで、川島羽美は腹の底が煮えくり返った。

――昔は、誠也が好きなのは自分だった。

当時だって、彼は自分のために榎本日織を露骨に冷たく扱ってくれていた。

欲しいものがあれば、千堂誠也は二つ返事で手に入れて差し出した。

なのに、榎本日織がいなくなってからの誠也は、まるで魂を抜かれたみたいに仕事に没頭して、何もかも放り出している。

葉月がいなければ――千堂誠也は本当に、ただの仕事の機械になっていたかもしれない。

それなのに。

夫も娘も...

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