第37章

「もう抵抗しなくていい。今夜はお兄ちゃんが、たっぷり可愛がってやる」

ほどなくして男は榎本日織を捕まえ、腕の中に抱き込んだ。今にも乱暴しようとする気配。

日織は、ようやくかき集めた力をその瞬間のために残していた。

服を着替えさせられていたせいで、元々護身用に忍ばせていた麻痺剤は使えない。なら――。

彼女は、人生でいちばんの力を振り絞り、男のいちばん弱い場所を容赦なく蹴り上げた。

「ぐぁっ……!」

男が悶え、その場に崩れ落ちる。

……よし。息ができる。

だが、安心している場合じゃない。日織が持っていたのはあくまで護身用の薬で、量は多くない。相手がすぐ正気に戻れば、今度こそ逃げ切...

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