第40章

「悪い人」

葉月は千堂誠也に向かってべっと舌を出し、その視線をすぐ榎本日織へ戻した。きらきらと輝く瞳には、期待がいっぱいに詰まっている。

榎本日織は目の前の葉月を見つめ、どうしても「だめ」と言えなかった。けれど、涼太と優斗のことが頭をよぎり、眉間に小さく皺が寄る。

その表情を見た葉月は、首をこてんと傾げて少し考える。そしてポケットを探り、色とりどりのキャンディを山ほど取り出して、両手に大事そうに乗せ、日織へ差し出した。

「優斗、甘いって」

たった一言。けれど日織には、葉月が何を言いたいのか分かってしまった。

初めて葉月に会った時も、涼太が同じように飴をいっぱい差し出してきたのだ。...

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