第45章

「おはよう。榎本さんと呼んでください」

「だって、川島羽美さんはもう千堂社長と婚約してるんだから。奥様になるのは、あの人のほうでしょう」

その呼び方を耳にして、榎本日織は一瞬だけ固まった。けれどすぐ、使用人の呼称をやんわり正す。

使用人たちは顔を見合わせた。互いの目の奥に、惜しむ気配と、隠しきれない驚きが浮かんでいる。

「……それにしても、いい匂い。何を作ってるの?」

日織はわざと話題を切り替え、コンロの上の鍋へ視線を落とした。

「お身体のためのものです」

歯切れの悪い答え。千堂誠也が日織のために用意させたものだとは、あえて言わない。

彼らの中では――本来それをするべきなのは...

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