第58章

「……様子は?」

黒崎正明は焦りを隠せなかった。たった一人の妹だ。幼いころから兄にべったりで、誰より懐いてくれていた。

歳の差は十二。黒崎杏は、正明が見守って育てたと言っていい。妹というより、娘に近い存在だった。

榎本日織は取り繕わず、ありのままを告げる。

「黒崎さんはかなり衰弱しています。臓器の働きも全体的に落ちていて……いまは、生命を維持する最低ラインで踏ん張っている状態です。長い間、強いストレスを抱え続けた結果だと思われます」

「差し支えなければ伺いたいのですが……黒崎さん、これまでに何か、強いショックを受けるような出来事がありましたか」

正明の表情がかすかに歪む。視線は杏...

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