第66章

「夫婦?」

 榎本日織は川島羽美を見据え、その取り繕いを容赦なく剥ぎ取った。

「婚約してるだけでしょう。夫婦なんて言うには、まだ早すぎない?」

 その一言で、川島羽美の顔色はいっそうひどくなる。

 婚約して六年。千堂誠也はいまだに結婚しようとしない。上流階級の社交界では、とうに笑い話だった。

 しかもそれを、千堂誠也の前妻である榎本日織に突きつけられたのだ。川島羽美は面子を潰され、ついに顔をどす黒く沈ませた。

「榎本日織……死にたいの?」

 吐き捨てるや否や、彼女は日織の前までずかずかと踏み込み、その手を高く振り上げた。平手打ちを食らわせるつもりだ。

 だが、榎本日織が動くよ...

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