第29章
倉持寧音は顔を窓のほうへ背けた。
流れる景色を黙って追いながら、声だけは柔らかいのに、芯だけは揺れない。
杉山海斗は、その意地の張った横顔を見て悟った。
今回は本気で怒っている。
小手先のプレゼントで機嫌が直る類いじゃない。
胸の奥に沈む焦りは、針みたいに細く密に肺を刺してくる。
息をするだけで、痛みが混じる気がした。
海斗は両手で寧音の肩を押さえ、無理やりこちらを向かせる。
「寧音……どうしたら許してくれる? もうやめよう、別居なんて……しないでくれ」
言ってから気づく。
自分はいま、焦って「許して」と口にした。
許しを乞うのは、罪を認めた者だけだ。
それはつまり―...
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