第32章

千堂暁は、倉持寧音がリハビリに来ると早くから連絡を受けていた。だが、十分以上待っても姿が見えない。

何かあったのでは――迎えに行こうかと腰を上げかけた、そのとき。

視界の先に、車椅子の倉持寧音が現れた。押しているのは、杉山海斗。

「千堂先生、どうしました? 俺を見て、あんまり嬉しそうじゃないですね」

杉山海斗は、千堂暁の目の奥に沈む陰りを見逃さない。

優雅に歩を進め、じわじわと距離を詰めてくる。

男同士だから分かる。千堂暁が何度も手間を惜しまず倉持寧音を送迎してきた、その理由が。

医者の善意?

そんなのは建前だ。

――こいつ、寧音に気がある。

杉山海斗の胸の奥で、冷たい怒...

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