第35章

倉持寧音は、杉山海斗が離婚に応じないことなど最初から織り込み済みだった。だから、別にどうという反応もしない。

杉山海斗に抱き上げられ、額にそっとキスを落とされても、そのまま受け流した。

視線だけが淡々と橋本礼子と杉山尚典をなぞる。挨拶の一つもなく、寧音は海斗と共にその場を後にした。

二人の背中がホールから消えた途端、橋本礼子が堪えきれない怒りを爆発させる。手近にあるものを片端から叩きつけ、ガシャン、と派手な音が響いた。

「尚典、私、倉持寧音が嫌いよ!」

「さっきの目、見た? あれは私を見下してた。挑発してた。宣戦布告よ!」

「長いこと生きてきて、あんな目で私を見た人間なんていない...

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