第51章

宮下乃介だけじゃない。執事までもが、呆然と立ち尽くした。

二人の視線が倉持寧音に突き刺さる。まるで化け物でも見るみたいに。

倉持寧音は片手で高くせり出した腹を支え、歯を食いしばって力を込めた。

そして――本当に、もう一歩だけ前へ出る。

「……うん。歩ける」

「ここ数日で、急にね」

「宮下乃介。見て。車椅子から降りて、歩くってことを、妊婦の私でもやってる。あなたは立派な男でしょう? まさか私以下だなんて言わないわよね」

それ以上、脚は動かなかった。

もう無理はしない。

執事に肩を貸してもらい、車椅子へ戻ると、倉持寧音は挑むように宮下乃介を見据えた。

澄んだ光を宿す瞳。

―...

ログインして続きを読む