第57章

「大丈夫」

倉持寧音は、千堂暁の目に宿る気遣いを感じ取り、そっと顔を背けた。

自分で車椅子に座り直す。

平静を装ってはいる。けれど指先が、まだ小刻みに震えていた。

千堂暁が来てくれるまで、ほんの少し前まで――本当に殺されるかもしれない、と覚悟していたのだ。

「前のとき、逃がすべきじゃなかった……!」

「安心して。こっちに向かう途中で通報してある。警察が必ず見つける」

寧音の緊張を見抜いた千堂は、彼女の肩に手を置いて、静かに落ち着かせる。

「ありがとうございます、千堂さん」

倉持寧音は、もう何度目かも分からない「ありがとう」を口にした。

それでも毎回、心からの言葉だった。

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