第60章

「サインはできません」

「カメラはどこ?」

「先に私に小切手へサインさせておいて、そのあとでこれを暴露するつもりでしょ。私が杉山グループの競合と結託して、機密を売ったって世間に言いふらして……杉山海斗が杉山グループの評判を気にして、私と距離を置かざるを得ないように仕向ける。離婚させるために、ずいぶん手が込んでるじゃない」

倉持寧音は向かいの男を見た。協議書の中身に目を通すことすらせず、きっぱり拒んだ。

分かっている。橋本礼子が、理由もなく白紙の小切手を差し出すはずがない。

罠だ。

「どうして、私がカメラを隠してるって分かったの?」

橋本礼子は面食らった表情になり、胸元に留めてい...

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