第62章

倉持寧音は、まるで心も視線も杉山海斗だけに注がれているかのように装った。

首をかしげ、彼に向けてやわらかく微笑む。

「あなたが一人いれば十分だよ。他の人の相手なんてする余裕、ないもん!」

杉山海斗は、自分の機嫌を少しでも損ねれば――すべてが崩れ落ちる気がしていた。

倉持寧音が自分だけを見ている、その様子に胸を撫で下ろす。

同時に、橋本礼子への嫌悪がまた一段、濃くなる。

この件は、絶対に終わらせない。

何度も何度も見逃してやったのに、橋本礼子はつけ上がる一方だった。

倉持寧音は、杉山海斗の瞳の奥に宿った冷えた光を見逃さない。怒っている。

なら、彼女が手を下さなくてもいい。杉山...

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