第63章

その夜、杉山海斗は結局、家に戻らなかった。

倉持寧音は夜が明け、隣に誰もいないのを確認すると、胸の奥の力がふっと抜けた。

今となっては、杉山海斗が帰ってこないことのほうが、むしろ救いだった。

彼女は何の感情も表に出さず、上原保美を呼んで身支度を手伝わせる。

朝食を済ませ、そのまま病院へリハビリに向かった。

リハビリが終わった頃には、もう午後になっていた。

上原未菜は、あの誘拐騒ぎ以来、怖がって寧音に連絡すらできずにいた。

以前「この時期はスタジオが忙しい」と言っていたのを思い出し、寧音のほうから会いに行くことにした。

未菜は寧音の顔を見るなり、ぎゅっと抱きしめて、涙をぽたぽた...

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