第8章

亜理亜視点

大和が向かいの席に滑り込んできて、カップを二つ置く。「キャラメル多め。君の好きなやつだ」

彼はまだ覚えてくれてる。大和は全部覚えてるんだ。私のコーヒーの好みも、ベッドのどっち側で寝るかも、玉ねぎは嫌いだけどニンニク入りなら何でも食べることも。

二人とも野球帽にサングラス姿だ。もうあまり意味はないけれど。

「来週、プレミアね」と私は言う。「緊張してる?」

「別に。君は?」

「ちょっとだけ。二人で歩く初めてのレッドカーペットだから」

彼がテーブル越しに手を伸ばしてきて、親指で私の口元の泡を拭う。顔が熱くなる。

彼の隣で目覚めるようになって三ヶ月。彼のいる家に...

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