第10章

十月の東京は、暖かく湿った空気に満ちていた。

最近の私は、空を見上げる暇もないほど忙殺されていた。新しく受けたアニメの仕事で、製作委員会から私のデザインしたキャラクターに修正意見が絶え間なく寄せられる。これでようやく完成だ、と思うたびに、メールボックスには新たな修正依頼が舞い込んでくるのだ。

「友佳子さん、このヒロインの目、もう少し調整できませんか? なんだか覇気がない感じで」

「友佳子さん、サブヒーローの髪型、今の若者向けにもう少し寄せられませんか?」

「岩岸さん、このキャラクターの服装デザイン、原案と少しズレがあるような……」

私はため息をつき、凝り固まった肩を揉んだ。

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