第9章

月島正海がこちらへ歩いてくる。私は考えるより先に、彼の方へ歩み寄った。

ごく自然に、私たちの手は絡み合う。十本の指が固く結ばれた瞬間、言葉にできないほどの安心感が胸に込み上げてきた。

伊藤尚久の顔色が一瞬でどす黒く曇り、まるで全身の血の気が引いたかのようだ。

彼の視線は私と月島の間を行ったり来たりし、やがて、固く握り合った私たちの手に留まった。

「なんでそんなに切り替えが早いんだ?」

伊藤尚久の声は激しい感情で震えている。

「八年だぞ? 八年も付き合ったのに、こんなに冷たくなれるのか? 俺が別れを切り出したら、すぐに別の男を見つけるなんて。この三ヶ月、俺がどんな思いで過...

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