第39章 偶然の出会い

昼食後、佐藤橋は特に何も感じなかったが、午後になると突然歯が痛み出した。

鏡の前で口を開け、口腔内を明るく照らそうと努める。左の奥歯は見た目には問題なさそうだが、頭の中では、小さな人々が歯の中に住み着き、巨大な回転鋸で歯根をゴリゴリと削っている光景を想像していた。まるで映画『ソウ』に出てくるような、血も涙もない拷問器具だ。

「親知らずが生えてきたのかしら?」佐藤橋は左の頬を揉みながら考える。今のところ腫れる兆候はない。「やっぱり親知らずの神様は、私を見捨ててはいなかったのね」

西村修はすでに出かけており、行き先は告げられていなかった。広い部屋には今、佐藤橋一人しかいない。鎮痛剤を探して...

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