第41章 含む

(私が彼のことを愛しているかって、考えてるのかな)

「ん?」松本祐介は、佐藤橋の思考を読んだかのように興味深げに手を止め、真剣な眼差しで問いかけた。「どう思う? お前は、俺を愛してるのか?」

「もし、愛してないって言ったら?」佐藤橋は挑発するように目を細めた。

「なら、俺もお前を愛さない」

松本の手が再び佐藤の背中を這う。人さし指と中指が、華奢な背骨の隆起をひとつひとつ確かめるように、ゆっくりとなぞっていく。その瞳は底の知れない古井戸だ。深淵には昏い闇がよどみ、縁だけが氷のように冷たく凍てついている。

「もし、愛してるって言ったら?」

今度は、松本は答えなかった。ただ、佐藤の体を...

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