第42章 スキャンダル

佐藤橋が目を覚ましたとき、時計の針はすでに正午を回っていた。昨夜の熱の名残が燻る体に鞭打って身を起こすと、隣はもぬけの殻だった。

松本祐介は仕事に出たのだろう。サイドテーブルに走り書きのメモが残されていた。冷蔵庫に食事があること、気に入らなければデリバリーでも頼め、と。

(結局、作ってくれたんだ……)

複雑な気持ちのままベッドから這い降り、手早く髪をまとめると、猫のように身を潜めて松本の部屋を抜け出した。幸い、同じ十階フロアは人通りが少なく、誰にも会わずに西村修の部屋――自分の住まいへと戻ることができた。

昨日取り付けた、村上という外部監督とのオーディションの約束を思い出す。時間は午...

ログインして続きを読む