第45章 反抗する勇気がない

今の自分がどうすべきか、佐藤橋にはまったくわからなかった。抵抗する勇気も、もがく力もなく、そして何より、藤井白悠がなぜ自分にオーディションを受けさせるのか、その意図がまるで理解できなかった。背中を冷たい汗が伝い、その冷たさがじわじわと全身に広がっていく。それは止めようのない、波のように押し寄せる感覚だった。

村上監督は、彼女の顔色が悪いのに気づき、心配そうに小声で尋ねた。

「大丈夫かい?」

「大丈夫、です……」

佐藤橋は無理やり笑みを作ると、スタッフに合図を送った。

彼女はオーディションステージの中央に立つ。眼下に散らばる数十人の顔は、ぼやけてよく見えない。ただ一人、藤井白悠だけが...

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