第46章 神秘な男

佐藤橋は、あてもなく街をぶらぶらと歩いていた。

太陽はすでに西に傾き、透明なショーウィンドウには次々とカラフルなライトが灯り始める。人混みに紛れながら、彼女はぼんやりと景色を眺めた。ふと、つい最近のある夕暮れを思い出す。あの時も自分はこの道を歩いていた。周りの店はこんなにも多くの物で溢れ、温かい黄色の光が行き交い、色とりどりの風船や店の看板の下で小さな旗が風に揺れていた……。

生活の中で小さな問題はあったけれど、全体的には意気揚々としていた。初めての長編映画の撮影を終え、田中健太と激しい情事を交わし、そして謎めいたウサギさんに出会った、あの頃。

実際のところ、佐藤はウサギさんの正体にず...

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