第48章 潤滑ゼリー

スタジオに人が集まり、照明と撮影の準備が整うと、監督はすぐに現場のクリアランスを始めた。

このシーンは、女スパイであるヒロインがターゲットの男を誘惑して暗殺し、ベッドを共にするという流れだ。物語全体の最初のベッドシーンであり、登場人物たちの言葉にならない感情が交錯する重要な場面でもある。

藤堂南はすでに衣装に着替えていた。心待ちにしていた蒔田澪が本当に降板させられたうえ、撮影延期の申請も無下に断られたことで、彼はあからさまにやる気をなくし、村上監督の目を盗んでは携帯でゲームに興じている。

撮影クルー全員が佐藤を待っているというのに、当の本人はまだメイクルームで、衣装の薄い布地に必死で潤...

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