第55章 優しいキス

「あっ!」

シーツで必死に体を隠し、ベッドの隅に縮こまる。佐藤は壁際に追い詰められた小動物のように、慌てて中村を指差した。

「あ……あなた、私、わた……」

「目が覚めた?」

上半身裸のまま、ベッドのヘッドボードにもたれて仕事をしていたらしい中村は、かけていた眼鏡を外し、優しく微笑んだ。

「おはよう」

その声と共に、佐藤の口角に柔らかな感触が触れた。優しい、朝の挨拶のキスだった。

「なんで、私、裸……」佐藤は顔を真っ赤にしながら言葉を詰まらせる。「昨日の夜、私たち……」

「うん」中村は事もなげに頷いた。「したよ。俺は最後まで五回戦ったけど、君は四回戦目で意識を失ったかな。確かじ...

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