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第一章――ロンドン

「いや、いや……いやっ!」

ベッドの上で、私は跳ね起きた。心臓は激しく鼓動し、額には玉の汗が滲んでいた。シーツがめちゃくちゃに体に絡みついている。あたりを見回しても何もない。部屋は闇に覆われ、雨が窓を激しく叩きつける音が聞こえるだけだった。

また同じ夢だ。いつも、決まって同じ夢。燃え盛る森の中を、私は走っている。背後からは、赤い目をした生き物たちが追いかけてくる。私の中の狼は、留まって戦いたがっている。けれど私は、まるで命が懸かっているかのように、何かを必死に探している。怒り狂う一羽のカラスを必死で捕まえようとするなんて、夢の中の出来事は何もかもが意味不明だ。伸ばした手がその尾羽を掴もうとした、まさにその瞬間、私は真っ暗な穴に落ちてしまうのだ。

デジタル時計に浮かぶ柔らかな青い数字が、午前四時を告げていた。私は毛布を押しやり、寝室から小さなテラスへと続くガラス戸のそばへ歩み寄る。戸をスライドさせて開けると、降りたての雨が持つ清らかな香りを吸い込んだ。この匂いが、私は大好きだ。雨が私を呼んでいるようで、私は外へと足を踏み出した。

目を閉じ、顔を上げて、雨が優しく肌を撫でるのに身を任せる。この三年間、ずっと見続けている奇妙な夢を忘れようと、しばらくの間そうしていた。ロンドンは朝の四時だが、ギリシャは二時間進んでいる。祖父に電話しようかとも考えたが、心配はかけたくなかった。

祖父、アルファであるディミトリ・セオドラスは、この世界で一番好きな人の一人だ。祖父と私は、いつも一心同体と言えるほど仲が良かった。私がロンドンに来てからまだ一ヶ月だというのに、祖父はもう二度も会いに来てくれている。私は同年代の子たちより早く高校を卒業し、大学で音楽を学ぶ道に進んだ。チェロは物心ついた頃から弾いている。そして二ヶ月前に二十一歳になったとき、母は世界最高峰の一つであるロンドン管弦楽団のオーディションを受けることを許してくれた。私は奏者として選ばれ、ロンドンのフラットに引っ越してきたのだ。

母は私が群れの縄張りから離れることに難色を示したが、祖父が、自分の夢を追うようにと母を説得してくれた。誰にも自らの運命を止めたり、変えたりすることはできないと、祖父は信じているのだ。祖父も、祖母も、そして母も、私には何か特別な運命が待ち受けていると固く信じている。一族に伝わる古い予言に関わる、何か特別な運命が。

私がロンドンに引っ越すとき、皆がふさわしいフラット探しを手伝いに来てくれた。立地、セキュリティ、そして交通の便が、彼らにとっての最優先事項のようだった。祖父はロンドンの中心部にある、広くて美しいフラットを強く勧め、一年分の賃貸契約料をすべて支払ってくれた。私自身はワンルームか寝室が一つあればそれで十分満足だったのだが、祖父は、私が練習するための十分な空間と、来客用の寝室が確保されていることを望んだのだ。今、私はテムズ川が脇に見えるこの寝室が三つあるフラットに一人きりで、小さなテラスの上に立っている。

何よりも恋しいのは祖父だ。私は祖父にとって一番年下の孫であるだけでなく、セオドラス家の孫の中で唯一の女なのだ。父には四人の兄姉がいた。兄が二人と姉が二人。彼らには皆、息子しかいなかった。キロス叔父さんが祖父の跡を継いでオリンパス・ブラッドムーン群れのアルファとなり、その後、その地位を長男、つまり私の従兄弟に譲った。

知る限り、母方に親戚はいない。母は一人っ子で、私も同じ。父は、私が生まれる前に亡くなった、知られている限り最後の『至高のアルファ』だった。命よりも深く母を愛した父が遺した唯一の形見、それが私なのだ。父にそっくりだとは、よく言われることだ。

目を開けて、空を見上げる。今夜は星が見えたらいいのに、と願うけれど、今朝から空は黒く荒れ模様の雲に覆われている。たいていの人間は、光害のせいで大都市では星を見るのが難しい。けれど、私は人間ではない。ワーウルフとしてのこの視力は、物事をより鮮明に、より遠くまで見せてくれるのだ。

私の名前は、ポセイドンによって星々の星座に変えられたカシオペア女王に由来する。父の輝く星も、そのカシオペア座の中に見つけることができる。星を見つめていると、いつも父が少しだけ近くに感じられるのだ。星が美しく輝く夜には、チェロを手に取って、父のために外で演奏することもある。

寝間着の長いシャツに雨が染み込んでくるのを感じ、私は部屋の中へと引き返してそれを脱ぎ捨てた。身体に活力がみなぎり、もう一度眠りに戻るのは到底無理そうだった。そこで私はトレーニングウェアとスニーカーを身につける。私のアパートの建物の一階には、屋内プールと本格的なジムが備わっている。エレベーターでロビー階へ降り、北ホールの突き当たりまで歩き、暗証番号を入力してジムの中へ入った。

ジムには誰もいなくて、好都合だった。ワーウルフである私は人間よりも力が強く、素早い。だから、普通の人間がするようなトレーニングでさえ、私にとってはウォームアップ程度のものだ。軽くストレッチを済ませ、誰か人間がやって来る前にと、急いでウェイト器具の方へ向かった。ちょうどレップを終えたところで、ジムのドアに近づいてくる足音が聞こえた。

「やあ、キャシー。早いね」コナーが声をかけてきた。

「ええ、雨の音で目が覚めちゃって、二度寝もできなくて。コナーは?」

「俺はトレーニングでいつもこの時間なんだ」と彼は言った。

「トレーニング?」

「ウェイトトレーニングさ」彼はそう言って微笑むと、ウェイト器具のステーションへ向かった。

「あ、そうなんだ。じゃあ、私はもう終わるところだから。頑張ってね」私はタオルとウォーターボトルを掴みながら言った。

「今日の午後は何か予定ある?」と彼が訊ねる。

「今夜はコンサートがあるの」

「角のカフェでパイントナイトとボードゲームの会があるんだ。もしその後何もなければ、今夜寄っていきなよ」

「楽しそうね。誘ってくれてありがとう」私はそう言ってジムを後にした。

コナーは私と同じ階に住んでいて、ロンドンに来てから最初にできた友達の一人。私より数歳年上で、背が高く、無造作なブロンドヘアに深緑色の瞳、そして筋肉質な体つきをしている。コナーなら狼の群れにいてもたやすく溶け込めるだろうが、彼は人間だ。ほとんどの時間を家で過ごし、コンピュータのソフトウェアプログラムを書いて生計を立てている。どうやら彼はコンピュータの天才らしく、いくつかの大手テック企業と仕事をしているそうだ。在宅で仕事をしていない時は、ドゥカティのバイクを乗り回している。

エレベーターで七階にある自分のフラットへ戻った。時刻はもうすぐ六時。オーケストラの練習は十時からなので、まだ時間がある。練習にコンサート、それにサイドプロジェクトである新作映画のサウンドトラック収録と、今週はとにかく多忙を極めていた。私たちの楽団は世界で最も偉大かつ多才なオーケストラの一つということもあり、映画音楽やサウンドトラックの依頼が後を絶たないのだ。

私がロンドン交響楽団に恋をしたもう一つの理由は、セント・ルークスで提供されている地域社会向けのプロジェクトやプログラムにあった。教会が修復された後、オーケストラとの提携で音楽発見・教育プログラムが立ち上げられたのだ。その会場は美しく、インスピレーションをかき立てる空間で、地域社会全体でイベントやコンサート、リハーサル、学習の場として利用されている。それに、ルークというのは、父が飼っていた狼の名前でもあった。誰よりも自己犠牲の精神に富んだ狼だった。

まずシャワーを浴びてから朝食を作ることにした。熱いお湯を浴びながら、私は目を閉じた。内なる狼、シアが身じろぎするのを感じた。祖父のディミトリと同じで、私は人生の早い段階で狼を授かった。ほとんどの人狼は十八歳で完全に成熟したときに狼を得るけれど、私は十六歳でシアを授かり、変身した。

私のエレメンタルの才能もまた、並外れたものだ。十二歳のとき、首筋に三日月の印が現れた。そして、水を操れることがわかった。十三歳の誕生日には土を、その翌年には火を、そして十六歳の誕生日には空気を操れるようになった。新しいエレメントを得るたび、何年もの間、それを制御し、発展させ、強化するための訓練を積んだ。訓練は祖父と共に行った。祖父はエレメンタルの修行におけるヨーダのような存在だ。

エレメンタルの才能を持つ従兄弟や叔父、叔母、祖父母は皆、一つしか能力を持っていない。水と火の両方を持つ祖母のレイヴンは例外だけど。父は三つ持っていて、そして今、私は四つすべてを授かっている。訓練をしていないときは、チェロの練習に明け暮れた。

私の狼であるシアもまた、強いアルファのオーラを放ち、その力は隠しようもない。そのため、祖父は私に彼女を抑制する方法を教えてくれた。意のままにオーラを抑制したり解放したりできる人狼はそう多くないが、私はそれを習得した。他の人たちと一緒にいるときは、彼女を休眠状態に保つことができる。そうすれば、正体を気づかれずに動き回れる。祖父はこれが重要であり、私に有利に働くと信じていた。自分が何者であるかを悟られることなく、他人や環境を観察できるからだ。

私はエヴィーと呼ばれる、ギリシャ北部の山岳地帯にしか自生しない珍しいハーブも使っている。エヴィーは乾燥させてお茶として煎じて飲む。狼が一杯飲めば、三日から四日間ほど匂いを隠すことができる。ひどい味だが、匂いを隠せば、他の者に嗅ぎつけられることもない。

匂いを隠し、オーラを抑制することで、人間の世界では人間として通用する。それに、望まない注目を避けるのにも役立つ。特にローグからの注目を。私の家族はローグをひどく軽蔑していたが、母は、彼らが皆それほど悪かったり野蛮だったりするわけではないと断言していた。母はかつて、古い群れから逃げるのを助けてくれたローグたちと暮らしそうになった時の話をしてくれたことがある。母がローグとして生きるなんて、想像もつかなかった。

シャワーを終え、体を拭くために外に出た。豊かな黒髪をタオルで拭き、それからドライヤーで完全に乾かした。髪は肩を少し過ぎるくらいの長さだったので、それほど時間はかからなかった。歯を磨き、青い瞳の周りにマスカラを塗り、フェイスパウダーをはたいて、口紅を少しだけつけた。

まだ体にタオルを巻いたまま、着替えるために寝室へ向かった。ダークブルーのジーンズと黒いセーターを選び、ウォーキングブーツを合わせた。練習が終わったら一度家に帰り、コンサート用の服に着替えて、今夜の演奏会のためにまた戻らなければならない。

外ではまだ雨が降っていた。ロンドンのこの時期にはよくあることだ。卵をいくつかとソーセージを焼き始め、それからパンをトースターに入れた。先週ノッティングヒル・ファーマーズマーケットで手に入れたばかりのマーマレードの瓶に手を伸ばし、トーストが焼けるのを待った。紅茶をすすり、朝食をたいらげた。

汚れた皿を食洗機に入れ、ついでに洗濯も始めた。幸運なことに、私のアパートには専用の洗濯機と乾燥機があった。私たちがリハーサルやコンサートを行うバービカン・センターは、アパートからわずか一・五マイルほどの距離だ。普段なら二十五分ほどで歩けるが、ずぶ濡れで到着するのは避けたかった。エレメントで天気を変えようかと一瞬考えたが、人間の世界にいる間はしないと母に約束していた。ブーツの紐を結び、タクシーを呼んだ。

二時間半のコンサート練習の後、今夜の演奏会まで解散となった。コンサート当日のリハーサルは、私たちが休息をとり、本番に備えられるように短く設定されている。オーケストラは今シーズン、国内外で百回以上のコンサートを行う予定だ。

オーケストラの仲間二人が、シカゴで開かれるワークショップへの参加者に選ばれた。現代最高の弦楽器の名手たちが集まるワークショップだ。そのワークショップの講師の一人には、何年も前に父の指導者の一人だったリヒャルト先生もいる。私も参加したくて応募書類を提出したのだが、残念ながら選ばれなかった。

ホールを出たのは、午後一時近くだった。雨は止んでいたので、アパートまで歩いて帰ることにした。雨上がりの空気はいつもとても新鮮な香りがする。セント・ポール大聖堂に向かって南へ歩き続け、そこから西へ折れてアパートを目指した。小さなテイクアウト専門のレストランを通り過ぎたとき、窓越しに料理人が魚の切り身を揚げているのが見えた。

イギリス料理といえば、フィッシュ・アンド・チップスをおいて他にない。しかし、美味しいものを食べるには店選びが肝心だということを、私はすぐに学んだ。ガラスケースの後ろに作り置きの魚を並べている店より、注文を受けてから揚げてくれるチッピーの方が好きだ。お腹がぐぅと鳴り、昼食にそれを買うならどこへ行けばいいか、私にはわかっていた。

アパートの近くに絶品のチッピーがあったので、そこに立ち寄って注文した。湯気の立つ熱い紙袋を手に、家までの残り二ブロックを早足で歩いた。コンシェルジュデスクのヘンリーに挨拶し、エレベーターで上がって廊下を自分の部屋のドアまで歩いた。ドアの鍵を開けると、テレビの音が聞こえてきた。ドアを押し開け、来訪者が誰なのか確かめるために中へ入った。

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