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第十三章 – 獣

ユードラ視点

夕食の席、アレスは私の隣の椅子に座っていた。すぐそばに彼がいるというだけで、心臓が喉まで跳ね上がりそうだった。気づけば、私は彼のことを横目で盗み見ていた。豊かな黒髪に、射抜くような青い瞳。信じられないくらい端正な顔立ちだった。

ただの男の人よ、と私は自分に言い聞かせた。まあ、厳密に言えば彼はただの男の人なんかじゃないし、私は許される以上に彼を求めてしまっている。彼を前にすると体が勝手に反応してしまうのはどうしようもなかった。どうか彼に気づかれませんように、と祈るばかりだ。彼の圧倒的な色気を前にしたら、血の通った女なら誰だって同じ反応をするに違いない。私は顔に笑...

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