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第二十五章 ― 子犬

ユードラ視点

日没が近づいていた。私は夕食の支度をする間、アレスを別の部屋で待たせていた。だが、彼がラナイにこっそり抜け出し、籐の椅子に座って海の景色を愛でるふりをしていることなんて、私にはお見通しだった。カーテンのわずかな隙間から彼が熱心に鑑賞している「絶景」は、着替え中の私だけなのだから。

私はわざと時間をかけ、ゆっくりと動いた。黒いレースのTバックを身につけ、上半身裸のままタオルで髪を拭く。それから髪をとかし、自然乾燥させることにして、軽く化粧を施した。サンダルを探すために屈み、荷物の中から服を探すために屈み、イヤリングをうっかり落としたふりをして、また屈む。...

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