第13章:イヤリング

虚弱な朝本ヒカリは蚊の鳴くような声で言った。「私たち、離婚しましょう!」

藤井謙信は眉をひそめた。「朝本ヒカリ、お前は自分が何を言っているのか分かっているのか?もう一度言ってみろ!」

朝本ヒカリはもうこの屈辱を与える男と向き合いたくなかった。涙を流しながら病院を飛び出した。

朝本ヒカリは大通りに出て、タクシーを手を挙げて止めた。車に乗り込むと運転手に言った。

「どこでもいいから、私が止めてと言うまで走り続けてください」

こんな奇妙な要求を初めて受けた運転手は戸惑った。バックミラー越しに朝本ヒカリを見ると、ワンピースを着ていて、ハンドバッグも携帯電話も持っていない。運転手は好奇心から...

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