第17章:私を離れて、あなたは生きられない

藤井謙信は顔を上げ、冷たい目つきで見つめた。

「お前のわがままに付き合う暇はない。持って帰れ」

「本気なんだ」

藤井謙信は無表情で手に持っていたサインペンを投げ捨てた。

鋼製のペンが机に当たり、カランと音を立てた。その音は朝本ヒカリの心に響いた。

「離婚の理由は何だ?私が口臭がひどくて無精症だと?デマを流すのは責任が伴うぞ」藤井謙信の声は冷たかった。

この件について、朝本ヒカリは少し心が痛んだ。彼女のまつげが微かに震えた。

「それは私が言ったことじゃない。離婚の理由はちゃんと書いてある」

藤井謙信は長い指で書類をめくり、彼女が記した離婚理由に目を落とした。その目にはさらに冷た...

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