第21章 彼女はただキスが欲しい

車が佐藤瑶子が住む団地の下に到着し、朝本ヒカリはシートベルトを外そうとしたが、服の裾が引っかかってしまった。

「ちょっと見せて」

白石延が身を乗り出し、彼女のシートベルトを外してくれた。

「はい、これで大丈夫」彼は笑顔で彼女を見つめ、一瞬二人の距離がとても近くになった。

朝本ヒカリは居心地が悪くなり、急いでお礼を言って車を降り、窓越しに手を振った。

「白石延、気をつけて帰ってね」

古い団地の車道は狭く、朝本ヒカリは白石延が安全に車を出すのを見届けてから廊下に入った。

空はすっかり暗くなり、音声感知ライトが故障していた。朝本ヒカリが携帯電話で照明を取ろうとしたその時、突然強い力が...

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