第30章 悪い男と卑しい女

佐藤薫がフェイスブックに投稿した一言で、彼が夜半に雨の中を出て行った理由が明らかになった。鈴木雪乃が妊娠していたのだ。

彼は藤井家の家伝のブレスレットを鈴木雪乃に渡しており、彼女を妻として認めていた。

「人はそれぞれ。あなたが彼の愛人でいることを望むなら、それでいいわ」

「朝本ヒカリ、あなたたちはもうすぐ離婚するんじゃないの?そんなことを言うのはおかしくない?」

朝本ヒカリは足を止め、振り返って鈴木雪乃を見た。

「あなたも言ったように、まだ離婚していない。離婚するまでは私は藤井家の若奥様よ。愛人のあなたが私を笑う権利はないわ」

朝本ヒカリは鈴木雪乃の顔を軽く叩いた。動作は軽かった...

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