第38章 救出

朝本ヒカリは背中を向けていたが、何かを感じて振り返った瞬間、鋭い白い光が目の前に現れ、彼女の顔に向かって切りかかろうとしていた。

「きゃあ!藤井謙信!助けて!」

混乱の中、朝本ヒカリは鈴木雪乃の悲鳴を聞いた。藤井謙信はきっと彼女を助けに行ったのだろう。

朝本ヒカリの心に悲しみが広がり、体は硬直し、頭は真っ白になった。目を閉じることしかできず、ほとんど諦めるようにして刃が落ちてくるのを待った。

しかし、予想していた痛みは訪れなかった。

朝本ヒカリは強い力で引き寄せられ、次の瞬間には見慣れた温かい腕の中に落ちていた。

呼吸の間に感じる男性の冷たい香り——雪を戴いた松のような香りは、心...

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