第53章 刺激が好きなんでしょ

男の体から漂う懐かしい木の香りが襲いかかり、朝本ヒカリは目の前の人の顔をはっきり見る前に、彼だと分かった。

彼女が眉をひそめると、藤井謙信は手を伸ばし、大きな手のひらが彼女の額に触れた。

「具合悪いのか?顔色悪いのに、人と食事に来るなんて」

昨夜、朝本ヒカリは冷水に浸かり、夜もよく眠れず、悪夢まで見ていた。

彼女は妊娠し、赤ちゃんを産むと決めてからメイクもしていなかったので、確かに顔色は悪かった。それでも美しく見えるのだが。

朝本ヒカリは手を上げて藤井謙信の手を払いのけ、そっけなく言った。

「私は大丈夫よ。藤井様だって多忙なのに、人と食事に来てるじゃない」...

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