第54章 あなたに帰ってほしい、あなたが必要だから

藤井謙信は朝本ヒカリを送ると言い出したが、彼女は内心うんざりしていたものの、断りきれなかった。

「手を離して。先に瑶子を探すから」

彼が送ってくれるなら送ってもらえばいい。彼が鈴木雪乃のために酒席を設けておいて、自分は途中で離れるというのなら、恥ずかしい思いをするのは鈴木雪乃であって、自分ではない。

藤井謙信は彼女が頷くのを見て、ようやく彼女の腰に回していた手を離した。

「駐車場で待っていてくれ」

男はそう言い残すと、立ち去った。

彼は携帯電話を個室に置き忘れたので、取りに戻る必要があった。

彼が階段を上ると、向こうから二人の少女が歩いてきて、互いに顔を寄せ合いながら携帯電話の...

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