第110章

「田中さん、見て。あれ、夕景の秘書と子供たちじゃない?」

山田静が即座に窓の外の一点を指さす。田中貴がその視線を追うと、そこには確かに古村苗と、あの双子の姿があった。

田中貴の表情が、瞬時にどす黒く曇る。

「田中さん、私もう国内にはいたくないの。いっそあいつらを誘拐して、夕景から金をふんだくってやらない? そうすれば海外に行っても金には困らないわ。どう?」

山田静は胸に秘めていた計画を、早口で田中貴に打ち明けた。

その言葉に、田中貴の心が揺らぐ。

一時間後。古村苗は哲也ちゃんと達也ちゃんを連れてショッピングモールの地下駐車場へ降りていた。買い込んだ荷物をトランクに放り込みながら、...

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