第112章

警察署に到着してから三十分も経たないうちに、安藤絵美のスマートフォンが鳴った。画面には原田桐也の名前が表示されている。

「絵美、今家に着いたんだが……どこにいる?」

原田桐也は予定していたビデオ会議を終え、リビングへ下りてきたところだった。しかし、安藤絵美たちの姿がどこにもない。食事にでも出かけたのだろうかと思ったが、家の中は静まり返っている。

「桐也様、警察署にいます」

安藤絵美が答えた瞬間、原田桐也の心臓が早鐘を打った。

彼は鋭い口調で問い詰める。

「なぜ警察に? 一体何があった。まさか、誰かに襲撃されたのか?」

原田桐也の脳裏には、ビジネス上の敵対者たちの顔が次々と浮かん...

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