第117章

「桐也様、おはようございま……」

言い終わるか終わらないかのうちに、原田桐也は彼女の唇を塞いだ。続きを紡ごうとした言葉は、すべて彼の中に飲み込まれてしまう。

どのくらい口づけを交わしていただろう。安藤絵美の呼吸が苦しくなり始めた頃、ようやく彼は名残惜しそうに唇を離した。

ここはT市ではなく、K市だ。

もし彼と二人で遅く起きて下に降りれば、あまり良い印象は与えないだろう。何しろ、彼とはまだ式も挙げていないのだから。

彼がベッドを降りて浴室へ向かうのを見届け、安藤絵美はほっと息をついた。

身支度を整え、原田桐也と共に階下へ降りると、庭では哲也ちゃんと達也ちゃん、そして古村苗が、原田家...

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