第12章

安藤絵美は聞いた途端に緊張し始めた。この桐也様は本当に彼女を枕営業させようとしているのか?

彼は確かに容姿も体格も悪くないが、仕事を盾に脅すなんて、反感を買うだけだ。

彼女は瞬時に冷静さを取り戻し、警戒心を持って彼を見つめた。「どうすれば誠意が十分だと言えるんですか?」

原田桐也は彼女の心の内を一瞬で見抜き、少し面白く思いながらも、何故か安堵感を覚えた。

これは彼女の先ほどの行動が、仕事のためではなく心からのものだったと解釈してもいいのだろうか?

「今夜八時の花火大会はT市で十年来最大の規模だ。一緒に見に行こう」

彼はゆったりと言った。

この花火大会は一年前から計画されていて、...

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