第120章

「教えてくれ、お前は一体誰だ?」

高藤老人は激昂した様子で数歩進み出た。安藤絵美が磁器の欠片を安藤羽言の首に突きつけていることになど目もくれず、ただひたすらに安藤絵美の顔を見つめて問いかける。

安藤絵美は眉をひそめ、高藤老人には答えようともしなかった。

だがその時、傍らにいた原田桐也が低く、磁力を帯びたような声で口を開いた。

「彼女は安藤絵美。俺の婚約者であり、母親の名は高藤楓子だ」

「何だと?」

高藤老人は愕然として原田桐也を見やった。安藤絵美もまた、訝しげに原田桐也を見つめる。

「桐也様、母の名は高藤遠恵です。高藤楓子などではありません」

原田桐也は深い眼差しを安藤絵美に...

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