第123章

安藤絵美は原田光紀の言葉から、かつて母が高藤家で受けていた重圧を察することができた。

母は後継者として育てられたと聞く。ならば当然、高藤の祖父が母に課すハードルは高かったはずだ。だからこそ彼は、母の感情的な欲求を無視し、原田光紀という夫をあてがったに違いない。

何しろ原田家はK市でも名家だ。高藤の祖父から見れば、原田光紀の身分は母に釣り合う申し分のないものだったろう。

「実のところ、君の母親が僕を好いていないことには気づいていたんだ。だが、僕は本当に彼女のことが好きだった。結婚してしまえば、愛情はゆっくりと育めるものだと思っていたんだよ」

そう語る原田光紀の瞳には、寂寥の色が浮かんで...

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