第19章

森川エリは納得できなかった。

若くてハンサムで金持ち、しかも名門の家柄を持つ貴公子に出会えたのに、彼女がそう簡単に諦めるわけがない。

今は「女優」と敬われていても、女優の黄金期はたかがこの数年。競争の激しい芸能界では、いつでも代わりの人間が現れる可能性があるのだ。

若くて美しいうちに良い夫を見つけて結婚しなければ、今の得意げな様子も、将来は惨めなものになるだろう。

だから何としても原田桐也の心を引かなければならない。

安藤絵美は少し頭を痛めていた。撮影クルーの連中が彼女の耳元でずっとおしゃべりを続けている。まるで彼女を、そんな浅はかなお世辞や媚びた言葉を好む女だと思っているのか。

...

ログインして続きを読む