第20章

「これは桐也様のお好みのコーヒーじゃないわ。自分で飲んだ方がいいんじゃないかしら」

安藤絵美が率先して口を開き、原田桐也に代わって森川エリが差し出したコーヒーを遮った。

森川エリは心中穏やかではなかったが、表情には出さず、ただ慎重に安藤絵美を見つめた。「夕景さん、私のことが嫌いなのは分かりますけど、一杯のコーヒーすら原田社長に差し上げさせないなんて、そこまでするものですか?」

彼女はしゃがみ込み、コーヒーをソファ横の小テーブルに置きながら、自分の胸元から覗く丸みを原田桐也に見せようと努めた。

そして潤んだ瞳で原田桐也を見上げ、甘い声で言った。「原田社長、一口だけでも飲んでくださいませ...

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