第27章

「桐也様、患者の私に何もしないと約束したのに、約束を破るつもりなの?」

安藤絵美は肩をすくめ、体をそっと後ろに引き、背中が車のドアにぴったりとつくまで移動した。

彼女が怯えた表情を見せると、原田桐也は軽くため息をつき、ドアを開けた。「降りましょう」

安藤絵美は彼の眼差しが先ほどほど熱くなくなったのを見て、ほっと息をつき、彼に続いて車から降りた。

顔を上げると、目の前に壮麗で豪華な城が広がり、息を呑むような光景だった。

少し歩くと、水しぶきを上げる噴水が見え、照明に照らされて真珠のように輝き、周囲には妖艶な赤いバラが植えられていた。

「見に行かないか?」

原田桐也は安藤絵美がその...

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