第31章

鈴木雲は安藤絵美の言うことにも道理があると感じ、まずは原田桐也に注射を打った。

田中淑子が原田桐也のために解熱剤を煎じに階下へ行き、安藤絵美が部屋に残って鈴木雲に尋ねた。「鈴木先生、古村苗の腕は大丈夫ですか?」

「大丈夫ですよ。少し内出血があるだけで、軟膏を一週間ほど塗れば完治します」

鈴木雲は使い終わった注射器を片付けながら安藤絵美に答えた。

安藤絵美はすっかり安心した様子で「よかったです。古村苗が昨夜アパートまで送ってもらったって言ってました。本当にありがとうございました」

彼女が言い終わると、鈴木雲の表情が変わった。何か良くない記憶を思い出したかのように、言葉にしがたい様子だ...

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