第36章

「山本勇だったのか」

安藤絵美の口元に冷たい笑みが浮かんだ。これは間違いなく山本芳が甥を寄越したのだろう。

山本芳の指示がなければ、山本勇がこんな人を破滅させるようなやり方で彼女を傷つけようとするはずがない。

安藤丘は知っているのだろうか。自分の妻がこんな陰険な計略を仕組んでいることを。

きっと知っているに違いない。

三年前、彼は平気で自分を他人の寝床に送り込んだのだ。今日になって急に情が移るわけがない。

安藤絵美の全身から冷気が漂い始めた。自分はやはり優しすぎたのかもしれない。

スマホをしまい、安藤絵美が立ち去ろうとした瞬間、突然電話の着信音が鳴り響いた。

画面を見ると、原...

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